第三夜 焼酎人情噺

鹿児島では「焼酎を飲もうか」という代わりに「祭りもんそか」という場合がある。 御神酒として酒を神聖視した民族的伝統から来るのか、最初のひと雫をお膳の片隅にこぼして、神に捧げてから頂くという風習もまた、ここならではのものである。

今ではあまり見られなくなったが、かつて鹿児島では客人に焼酎を強いる風習があった。本富安四郎「薩摩見聞録」につぎのような一節がある。

「薩摩にては焼酎を強ゆるを馳走とせり。客人下戸にて百万之を辞退するも決して許さず。(中略)故に客飲まざれば主人楽しまず。客人大酔いすれば一家大喜びなり。若し途中にて倒れ、或は人に扶けられて帰る等の事は、主人の最も満足する所なり」
今の世の常識からすれば過激とも思える接待振りではある。しかしながら、焼酎をこよなく愛する余り、うまい焼酎を勧めるのは至極当然という、焼酎飲みの純粋一途な心情も、汲み取れるのである。

悲しいことがあれば一杯。楽しいことがあれば、また一杯、一日を締めくくる晩酌を「だれやめ(疲れ止め)」と呼び親しむ風習もまた、焼酎を生涯のもう一人の伴侶とみなす、この土地ならではの心優しき伝統と考えたい。

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